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環境問題と私達不妊も関係か?

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世界初の試験管ベビーとして生まれたイギリスのルイーズさんも、今年で28歳になります。
体外受精で生まれた子どもは、いわゆる先進諸国では、近年、出生の1~2%にのぼるといわれています。卵を体外に取り出して、精子をかけて受精させ、ある程度まで薬液(培養液)中で発生させてから子宮に戻す体外受精と、さらに最近では、精子一個を卵に直接注入して受精させた後、薬液(培養液)中である程度まで発生させて子宮に戻す細胞質内精子注入法(ICSI)も行われるようになってきています。
「このような不自然な状態で、ヒトの生命の始まりが行われて異常が出ないの?」
「培養液が生まれてくる子どもの生涯に重大な影響を与えない、という安全性の保証はあるの?」というのは誰もが持つ素朴な疑問ではないでしょうか。
そして、「異常が出てくる可能性は高くなる」ということが、最近だんだん分かってきました。

胎児の発生初期に働く遺伝子

それを理解するためには、ちょっと難しい遺伝子のことを知らなければなりません。ネズミ、猫や犬、牛や羊などのようにお母さんのおっぱいを吸って栄養を摂る動物を哺乳類といいます。ヒトも哺乳類です。
哺乳類には、両親から受け継いだ遺伝子が備わっていますが、実際には、片方の親から貰った遺伝子が働き、もう一方の親から貰った遺伝子は働かないように封印されます。これがゲノムインプリント機構です。
この働きをするインプリント遺伝子の情報は発生の初期に新しく組み換えられ、このとき胚の置かれている環境が影響します。

異常が体外受精で増加するリスク

インプリントの異常が原因と考えられる病気に、ベックウィズーヴィーデマン症候群(膀ヘルニア、巨舌、巨人症、時に新生時期の低血糖症を伴う過成長症候群、合併症として半身肥大とウィルムス腫瘍がある)があります。体外受精で生まれた子どもでは、これらの異常が体外受精以外で生まれた子どもに比べて、9倍多いのです。
また、アンゲルマン症候群(精神遅滞、失調、笑い発作、けいれん、特徴的顔貌、会話の乏しさを特徴とする)も、インプリントの異常が原因で起こり、体外受精で生まれた子どもに報告されています。
体外受精が長期にわたる体の成長に及ぼす影響や、内分泌に及ぼす影響を調べた研究報告はまだありません。しかし、正常に生まれた体外受精児でも、自然妊娠で生まれた子どもと内分泌ホルモンの状態がまったく異なるのだと主張している学者もいます。ガンへのかかりやすさもインプリントの異常で増えてくる可能性があります。
いずれにしても体外受精では異常が増えていること、まだヒトの生涯にわたる実験の段階であることを、不妊治療を受けるカップルは知っておくことが大切です。

体外受精では、妊娠の効率をよくするため、2つ以上の受精卵を子宮に戻すことがよく行われます。つまり、人工的な双子、三つ子、四つ子、五つ子というわけです。
胎児は、普通、1人につき1つの胎盤を持ち、お母さんの血液から栄養をもらい、お母さんの血管を通して(お母さんの腎臓や肝臓を通して)老廃物を捨てています。
ところが、1つの胎盤を2人の胎児が共有することがあります。これは、今までは一卵性の双子に起こるとされてきました。
1つの受精卵が2つに分かれてそれぞれが育っていったのが、一卵性の双子です。
遺伝子も同じなので、外見上とてもよく似ている双子で、もちろん、一方が女の子なら、もう1人も女の子です。

一つの胎盤を共有する危険性

ところが最近、遺伝子の違う二卵性の双子が1つの胎盤を共有する場合があることが、わかってきました。自然にも起こりうることですが、体外受精で複数の受精卵を子宮に戻すことで、より頻繁に起こってきます。
なぜ胎盤を2人で共有(一絨毛膜性双胎)していけないかというと、さまざまな困難が起こってくるからです。
まず、2人のうち1人が、特に妊娠中期、後期※1に死ぬ危険が高まります。
一般に、双子では、妊娠前期に1人が死ぬ確率は50%と多いのですが、その場合、一方の生きている胎児の予後はいいのです。
ところが、妊娠中期、後期に片方の子が死ぬと、胎盤を2人で共有する場合には、生きているもう1人の赤ちゃんも神経学的障害を受けやすくなるのです。さらに、早産の危険も高まります。
また胎盤を2人で共有すると、2人の血管がつながってしまい、双子の1人の胎児の血液が、もう1人の胎児の体内に流れ込む(輸血)現象が起こる場合もあります。
双胎間輸血症候群といって、予後は悪く、双子の片方が、胎児期や新生時期に死亡する率は、とても高くなります。
今の話は、一卵性双生児の場合ですが、体外受精で生まれた子どもの中に、男女の二卵性にもかかわらず、1つの胎盤を共有したと考えられる例が見つかっています。
2人の遺伝子の、由来の違う血液をもつキメラ※2(部分キメラ)が数例報告され、不妊治療に携わる人々をぎょっとさせました。
牛は、体外受精で妊娠出産することが普通に行われていて、雄と雌の交じり合った遺伝子を持つキメラが報告されています。
生まれた雌は、フリーマーチンといって、子どもが産めない不妊牛です。
ヒトの場合、幸いなことに、血液だけのキメラですが、男児なのに、外見上は女性の例が報告されており、キメラとの関係はまだ不明ですが、この子たちの健康について、将来にわたる追跡調査が必要となっています。

※1) 産婦人科では、全妊娠期間(40週)を3つに分けて、妊娠3半期前期、中期、後期といいます。省略して妊娠前期、中期、後期ということもあります。
※2) キメラ:生物学で、異なる遺伝子型の細胞が共存している状態の一個体。